問題 7 次の文章を読んで、[41]から[45]の中に入る最もよいものを、1・2・3・4 から 一つ選びなさい。
近くの商店街を歩いていたら、新しい店ができていた。お好み焼き屋のようだ。さりげなく覗くと、客はまばら で、しらじらとした灯りがテーブルに反射している。一緒に いた友人と「大丈夫なのかな、こういう店」などといいながら通り過ぎようとしたら、突然ドアが開いてエプロ ンをした若者が飛び出してきた。「よろしくお願いしますッ!」と店のカードを差し出す。勢いにのまれて受け取る と、べコリと一礼して戻っていた。店を覗いていた私たちに気がついて、反射的に店から(41)。
「やるねえ、あの子」と友人。彼女は企業の管理職である。理屈ばかりで身体が動かない若者が多いとぼや き(注 1)「ああいうのが一人、部下に(42)」と言った。「ほんとほんと」と私。
(43)だって若いころは、考えることと身体が動くことの間に時差がなかった。駆け出しの編集者時代、ロケ やスタジオ撮影の現場では、指示されるより先に走りだしたものだ。友人に向かって自画自賛しながら、頭の 隅で思っていた。本当は今だって、そうじゃなきゃマズイんじゃないか、と。 フリーランサー(注 2)の私は、一生、管理職になることはない。アルバイトか店主かは知らないが、あの若者 と同じ立場なのだ。(44)いつの間にか、ひどく腰が重くなっている(注 3)。
よし、明日からは臨戦態勢(注 4)でいくぞ、見習うべきは(45)。思わず苦笑した。しかし気分は悪くない。 若者よ、ありがとう。
(日本エッセイスト・クラブ編『散歩とかつ丼―10 年版ベスト・エッセイ集』による)
(注 1) ぼやく:不満に思っていることを独り言のように言う
(注 2) フリーランサー:組織に所属せず個人で仕事をしている人
(注 3) 腰が重くなっている:行動を起こすのが遅くなっている
(注 4) 臨戦態勢:ここでは、いつでも動けるように準備ができている状態
41.
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