問題 7 次の文章を読んで、[41]から[45]の中に入る最もよいものを、1・2・3・4 から 一つ選びなさい。
ずーっと刻まれる「母の愛」
友人からの深夜の電話。彼女は息子の小 1 のときのクラスメートの母親で、いわゆるママ友である。お寿司 屋さんの彼女とは家族ぐるみのつき合いで、もう 20 年以上が経つ。仕事を持つ私たちが自分の時間を持て るのは、決まって深夜。いつも真夜中にいろいろなことを話し、助け合いながら生きてきた。
(41)息子が一人暮らしを始めた。育ち続けるのだそうだ。お祝いを兼ねてアパートを訪ね、夕食を作り、洗濯 をし、汗だくになって真新しいカーテンをつけ終えたという。そして帰る母親に彼は一言「じゃあね」。その「じゃ あね」に頭にきたと。 なぜ、「お母さんありがとう」と言えないのだ。(42)と、寂しくなったという。 彼女自身は幼 い頃に両親が離婚し、父親の元で育ち、中学から家事一切を任されていた。彼女の洗濯物のたたみ方は今 でも見ていて美しく、気持ちがいい。子供たちにはできる限りのことをしてあげたいと、いつも一生懸命やって きたという。「それでいいんだよ」。そう答えながら、私には突然、自分が 7 歳のときの光景が蘇った。
(43)、私の母も働いていた。ある日、初めて友人が家に遊びに来ることになり、前の晩一緒にお風呂に入り ながら、母にそのことを告げた。「明日ね、○○チャンと○○チャンと…」。母は黙って(44)。翌日帰宅すると、テ ーブルの上の紙皿 に、人数分の数種類のお菓子がきれいに並べられていた。手作りのケーキや高価なお菓 子でもなんでもないけれど、私は自慢げにみなに言った。 「さあ、おやつですよー」
そうなのだ。愛情は突然蘇り、胸いっぱいに広がり、生き続けるものなのだ。彼女の息子への愛も、これから ずーっと彼の心で (45)。
(大竹しのぶ朝日新聞 2013 年 7 月 19 日付夕刊による)
41.
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