問題 7: 次の⽂章を読んで、⽂章全体の内容を考えて、(41)から(45)の中に⼊る最もよいものを、1・2・ 3・4から⼀つ選びなさい。
以下は、丑年の2009年1⽉7⽇に新聞に掲載された⽂章である。
⽜の気持ち
⼦供の頃、⼗⼆⽀の⺠話(注1・2)を聞いたとき、私が気になったのは、とにかく⽜のことだっ た。⽜は、「⾃分は歩くのが遅いから、早めに出発しよう」とずいぶん早いうちから出発した。 そして、⼀着でゴールする⼨前であったにもかかわらず、⾃分の背中に乗っていた⿏に先を越さ れてしまう。
⽜がどんな気分だったか、と考えると切なくて仕⽅がない。⾃分の地道な努⼒が利⽤されること は、さぞかし悔しかったはずだ、と (41)。が、そのことを話すと、⺟は、「⽜はあまり気に しなかったんだよ。⼗⼆⽀には⼊れたし。「モーいいか」と思ったくらい」と答えた。少しほっ とした。確かに、⼗⼆⽀の⼀番⽬が、⼆番⽬に⽐べて特典があるとも思えない。怒るほどのこと でも (42) 。
さて先⽇、⼦供が指を怪我した。軽い打撲だとは思ったものの、⼩⼼者の私はすぐに整形外科へ 向かった。⾞を⾛らせ、医院に辿り着くと駐⾞場がいっぱいで、これは混んでいるな、と焦っ た。エレベーターに乗ると、向こうから⾛ってくる男性がいる。閉まりかけの扉を開くが相⼿は 礼も⾔わずに乗り込んできて、⽬的階に到着すると当然のように先に降り、さっさと受付へと向 かってしまった。
「こちらのほうが先に来ていたではないか!」と⾔葉が出かかった。 (43) 頭を過ぎったの が、⽜のことだ。「ゴール⼨前で追い抜かれた⽜は、この程度のことは気にかけなかったはず だ。ここは、『モーいいか』の精神だ」と思えたのだ。なるほど、⽜のおかげで (44) 、と私 は気を良くし(注3)、その後、「⼗⼆⽀の⺠話」の本を探した。
読んでみると、追い抜かれた⽜の場⾯には、「とても悔しがり、『モーモー』と怒りました」と 書いてある。何と、⽜ (45) 怒ったのだ。そのことにショックは受けた。が、怒るべき時は怒 る、これも⼤事なことだな、と私は調⼦よく考える。今年の私の⽬標は、「モーいいか」と「も う怒りました」をバランス良く使い分けることだ。
(伊坂幸太郎 『3652――伊坂幸太郎エッセイ集』による)
(注1)⼗⼆⽀:⼗⼆年で⼀回りする暦。⼀年ずつを異なる動物で表す
(注2)⼗⼆⽀の⺠話:⼗⼆⽀の動物を競争で決めたという話。⼀番⽬が⿏で、⼆番⽬が⽜になっ た
(注3)気を良くする:いい気分になる
41.
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